「 南禅寺 」
「 絶景かな、絶景かな。」南禅寺の三門に登って、大泥棒だった石川五右衛門が歌舞伎 楼門五三桐という演目の中で言った台詞。
実際登ったことがあるけど、確かに景色はいい。
南禅寺界隈は高い建物がないから、景色は石川五右衛門が生きた時代とあまり変わらないのかも。
南禅寺 について
南禅寺は鎌倉時代に選定された格式の高い五つの禅寺 (※ 京都五山) のさらに上、別格扱いの寺院。
日本の全ての禅寺の中で最も高い格式を誇ります。
※天龍寺・相国寺・建仁寺・東福寺・万寿寺 (まんじゅじ)
南禅寺は臨済宗南禅寺派の大本山。
創建は鎌倉時代の正応四年 (1291)。第90代 亀山天皇の離宮だったところに建てられました。
当時、この離宮で夜な夜な不思議で怪しい出来事が起き、亀山上皇は頭を悩ませておられたそう。
そこで京都で有名だった東福寺の無関普門禅師 (むかんふもんぜんじ 大明国師) に相談したところ、20人の弟子と共に離宮に入りました。
不思議に思われた亀山天皇が無関普門禅師に聞かれたところ「私共は特別なことはしておりません。ただ、禅の作法通りに粛々と生活を送っただけです。」と。
そして「妖 (よう) は徳 (とく) に勝たず。」という昔からの考えを引き合いに出し、徳のある生活・心構えあるところに「妖」は寄りつかない!ということを説明。
そのことにいたく感銘を受けられた亀山上皇が「この地に禅寺を建てよ!」 といわれたのが「南禅寺」の始まり。
つまり、日本で最初に天皇の願いで創建された禅寺 (勅願禅寺) が南禅寺。
そのため、京都五山を上まわる格式、別格扱いの寺院となりました。
南禅寺の正式名称
南禅寺の正式名称は瑞龍山 (山号:ずいりゅうさん) 太平興国南禅禅寺 (寺号:たいへいこうこくなんぜんぜんじ) 。
めっちゃ長くて覚えられない!!
長くて覚えにくいから、寺号の太平興国南禅禅寺を省略した「南禅寺」を通称としています。
南禅禅寺は言いにくいしなー。
ちなみに、このお寺の通称。
実は寺院が自ら呼ばれたい名称にしているんです。だから、○○寺や○○院という呼び方が存在しています。
○○寺や○○院に違いはありません。すべてお寺。
南禅寺は、○○寺という呼び方。
一方、知恩院の正式名称は、華頂山 (山号 かちょうざん) 知恩教院 (院号 ちおんきょういん) 大谷寺 (寺号 おおたにでら) 。
院号の知恩教院を省略した「知恩院」を通称としています。
地元の京都人の中には知恩院とは言わずに、寺号の大谷寺を親しみを込めて「大谷さん」と呼ぶ人もいます。
南禅寺 境内
度重なる焼失によって、現在の伽藍は江戸時代初期のもの。
三門
室町時代に火災で焼け落ち、江戸時代初期に再建。※日本三大門のひとつ。
※あとの二つは知恩院 (京都市) 、久遠寺 (くおんじ 山梨県)
南禅寺の三門といえば、石川五右衛門。
歌舞伎 楼門五三桐 (さんもん ごさんの きり) という演目で、南禅寺の三門に登って景色を見て「絶景かな、絶景かな。」と言う台詞。
ただ、寛永五年 (1628) に三門が再建されたときには、石川五右衛門は生きていなかったというのが事実。
再建したのは戦国武将 藤堂高虎。
築城の名手で、主を変える度にどんどん出世していきました。
再建には大阪 夏の陣で東軍として参陣し、多くの家臣を失った「弔い」の意味もあったそう。
三門の2階は「五鳳楼」と呼ばれるお堂。
本尊の宝冠釈迦如来像、脇に月蓋長者像 (がっかいちょうじゃぞう) と善財童子像 (ぜんざいどうじぞう) が安置。
さらにその左右には十六羅漢像 (じゅうろくらかんぞう) が控えています。
法堂 (はっとう)
南禅寺の重要な儀式や法要が行われるのが法堂。
内部には本尊の釈迦如来像、右には文殊菩薩像 (もんじゅぼさつぞう) 、左には普賢菩薩像 (ふげんぼさつぞう) が安置されています。
三尊像の上の天井で睨みを効かせているのが幡龍図 (ばんりゅうず) 。
明治を代表する日本画家 今尾景年の大作です。
龍は「法の雨」、すなわち仏の教えを降らせる とされています。
禅寺で法堂の天井に龍が描かれることが多いのはこの理由から。
京都五山に数えられた天龍寺・相国寺・建仁寺・東福寺でも天井に龍が描かれています。
方丈 (ほうじょう)
大方丈
住職の住まいで日常的な務めや法会などを行うところ。
南禅寺の方丈は大方丈 (おおほうじょう) と小方丈 (こほうじょう) に分かれています。
どちらも国宝に指定されていて、大方丈は御所からの、小方丈は安土桃山城 書院の移築。
その二つを江戸時代に合体させたのが今の方丈。
大方丈の中央にある「御昼 (おひる) の間」をはじめ方丈の内部は安土桃山時代前期に活躍した狩野派の絵師たちの障壁画で彩られています。
二十四孝図、琴棋及群仙図 (きんきならびにぐんせんず) 共に狩野永徳 作 や小方丈の「虎の間」にある『群虎図 (ぐんこず) 』 狩野探幽 作など。
南禅寺 武家面
南禅寺の「武家面 (ぶけづら) 」といわれ、藤堂高虎が三門を再建したように「武家」との繋がりが強いお寺。
他には妙心寺の算盤面、建仁時の学問面、大徳寺の茶面、東福寺の伽藍面、相国寺の声明 (しょうみょう) 面などがあります。
だいたい想像がつくけど「相国寺の声明面」とは、相国寺のお坊さんのお経を読むのが美しかったことから「相国寺の声明面」といわれたそう。
南禅寺 庭園
方丈庭園 (国の名勝)
大方丈の正面にある庭園は江戸時代初期に小堀遠州が作庭した枯山水。
小堀遠州は作庭だけでなく、茶人としても名高く、文化的な才能にも恵まれた武将。
白砂が川の流れ、石が山を表し山深い渓谷の風景を表現。
誰が言ったのかわからないけど、いつの頃からか、親虎が子供の虎を連れて川を渡っているように見えることから「虎の子渡しの庭」と呼ばれるようになりました。
如心庭 (にょしんてい)
小方丈にある庭園が如心庭。
昭和40年代に柴山全慶老師の指導による作庭。
心のままに、感じるままに眺めるお庭です。
六道庭
龍吟庭
鳴滝庭
還源庭
南禅寺垣
南禅寺 水路橋
南禅寺の境内を貫くように通り、琵琶湖疎水の支線が流れているのが「水路橋」。
古びたレンガ造りの姿が南禅寺の景観のひとつになっている。
でも、普通ならお寺の境内にこのようなものが通るのは不自然ですよね ?
できたのには、やはり理由があります。
琵琶湖疎水事業
応仁の乱で荒れ果てていた南禅寺を復興したことでも知られているのが金地院崇伝 (こんちいん すうでん) 。黒衣の宰相として徳川家康を政治的に支えた人物。
江戸時代を通じて南禅寺は徳川幕府との関係が続き、明治維新の廃仏毀釈 (はいぶつきしゃく) を迎えることになります。
日本全国で仏教排除の働きかけが起こり、領地没収等などが行われ、南禅寺も例外ではありませんでした。
同時期に持ち上がったのが、「琵琶湖疎水事業」。
東京遷都に伴い落ち込んだ京都の景気浮揚対策と京都を元気づけるために行われた大事業。
その事業で農業用水等に使うため、南禅寺の境内に琵琶湖疎水の分線を作る計画が持ち上がりました。
通常はお寺の境内にそんな無理なことをしないし、京都五山のさらに上、別格の格式を持つ南禅寺ならなおさら。
ただ、南禅寺は徳川幕府との関係が特に深かったために、徳川幕府を倒した明治政府から無理難題を押し付けられたのかもしれません。
反対の意見もあったけど結局は「京都の市民のためなら」ということで琵琶湖の支線を流す「水路橋」の建設が始まりました。
年月を経て南禅寺の一部のように溶け込んだ水路橋は、逆に今は南禅寺に無くてはならないものになりました。
今となっては、水路橋が建設されたのは良かったのかもしれないですね(^^)
南禅寺 アクセス
・京都市地下鉄東西線「蹴上駅」下車徒歩約8分
・市バス5号系統「南禅寺永観堂道」下車徒歩約5分
近くの観光スポット
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清流亭
南禅寺の三門から徒歩約3分にあるのが「清流亭」。
清流亭の敷地内に咲いている紅枝垂れ桜やソメイヨシノが敷地の外側からでも楽しめます。隠れ家的な桜スポット。
永観堂
南禅寺の三門から徒歩約5分にあるのが「永観堂」。
放生池の周辺に紅葉が散りばめられ, 見るものを魅了させてくれます。さすが, 京都で指折りの紅葉スポット「もみじの永観堂」。
哲学の道
南禅寺の三門から徒歩約9分にあるのが「哲学の道」。
若王子橋から銀閣寺橋の2km以上にわたり、琵琶湖疎水の分線沿いに遊歩道が整備され沢山の桜が植えられています。大正時代、哲学者の西田幾多郎 (きたろう) が好んで散策したことから「哲学の道」と呼ばれるように。
南禅寺 まとめ
一度ゆっくり訪れて見たいと思っていた南禅寺。
ちょうど、紅葉の時期に行くことが出来て大満足。
紅葉を観るのには良かったけど、晴れの日だったから小方丈庭園 (如心庭) や龍吟庭では光と影が強すぎた。
庭だけを観るのなら、やっぱり曇り空のほうがいいなー(^^)
大方丈庭園 (虎の子渡しの庭) は知っていたけど、他にも庭園があって見所が多いお寺。
庭好きには特にオススメです。
国宝に指定されている大方丈 (おおほうじょう) と小方丈 (こほうじょう) も見所。
安土桃山時代前期に活躍した狩野派の絵師たちの障壁画も見逃せない!!
京都 神社仏閣 関連リンク
所在地:京都市左京区南禅寺福地町
電話:075-771-0365 南禅寺ホームページ
拝観時間:8:40~16:30 (12月1日~2月28日)/8:40~17:00 (3月1日~11月30日)
※拝観受付は拝観時間終了の20分前まで。 ※ 年末 ( 12月28日 ~ 31日 ) は一般の拝観は不可。 ※ 年始は無休。
拝観料金:大学生以上600円、高校生500円、小中学生400円
※ 拝観時間・拝観料等は変更されることがありますので、寺院にご確認ください。万が一、間違っていたとしても責任は負いかねます。予めご了承ください。
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