「 平等院 」
光が全ての人を分け隔てなく等しく照らしているように, 仏の救いも全ての人に対して等しく与えられることを意味して名付けられたのが「 平等院 」。
世界遺産に登録されています。
どの宗教にも属さない寺院で, 十円硬貨に鳳凰堂が描かれていることでも大変有名。
平等院 創建
もとは源氏物語の主人公「光源氏」のモデルといわれる源融 ( みなもと の とおる ) の別荘でしたが, 平安時代に政治の実権を独占した貴族 藤原道長 ( 966 ~ 1027 ) が譲り受けました。
道長は自分の娘を時の天皇に嫁がせ政治の力を獲得。
その気持ちを表したのが有名な望月の歌。
この世をば わが世とぞ思ふ望月の 欠けたることも なしと思へば
道長の絶頂期に詠まれた歌で, 満月が欠けているところがないように, 全ては意のままで足りないことなど何もない。
そんな望むがままの道長に唯一足りなかったもの。 どうしても避けられなかったことが, 「死」。 唯一自分でどうしようもないことへの恐れが,「 ※極楽往生 」を求めることとなりました。
※死んで, 極楽浄土に生まれること。 また, 安らかに死ぬこと。
道長の子 藤原頼通 ( 992 ~ 1074 ) が, 父の死後, 寺に改めました。
平等院の鳳凰堂は「 極楽浄土 」を表しています。
平等院 境内
鳳凰堂
鳳凰堂は10円玉に描かれているので, 馴染み深いですよね。
その鳳凰堂の形はとても特徴的。それが, 左右に配置された「 翼廊 ( よくろう ) 」。
二層構造になっているけどが, 人が通れるのは1階のみ。 2階は高さ90センチしかないので, 通れるのは, 鳥か小動物か虫(笑)。
何故そんなことをしているかというと, 鳳凰堂を見るものにより美しく見せようとした「 飾り 」だそう。 仏教の経典にある阿弥陀如来の宮殿をこの世に表現したといわれています。
この世のものとも思えないような, 鳳凰堂を極楽にある建物のように見せたかったのかもしれません。
阿弥陀如来坐像 ( 国宝 )
鳳凰堂の内部には追加料金300円で拝観可能。 案内の人が中で5分くらい説明してくれます。
本尊は, 平安時代後期の仏師 定朝 ( じょうちょう ) が彫った高さ2M80CMの阿弥陀如来坐像 ( 国宝 ) 。
阿字池 ( あじいけ ) の向こうからでも, うっすらと姿を拝めます。
座っておられるけど, めっちゃ大きい。 まえにある阿字池 ( あじいけ ) をはさんで正面から見ても阿弥陀様のお顔が遠く拝むことができるほどの大きさ。
そして, 完成した時ほどではないだろうけど, 黄金色に輝いています。 全ての人に等しく救いを与えることができるであろう神秘的な優しさと無限の力強さを感じます。
その姿は, 人々を救うために深い瞑想に入っているといわれています。 自然と手を合わせてしまうほど圧倒的な存在感。 本尊の後ろの光背 ( こうはい 御光のようなもの )の菩薩や, 天井にある天蓋 ( てんがい ) という装飾具も黄金に輝いています。
阿弥陀如来坐像 ( 平等院HP )
雲中供養菩薩 ( 国宝 )
定朝 ( じょうちょう ) の工房で彫られたもの。 ※ 鳳凰堂内部の白壁にあるのは52体の雲中供養菩薩 ( うんちゅうくようぼさつ ) 。
全て雲に乗った菩薩様で, 色々な楽器を演奏していたり, 舞を踊っておられます。 鳳凰堂内部の半分は本物で, もう半分はミュージアムで展示されています。
※ 拝観したときは足場を組んで修繕中だった。
雲中供養菩薩 ( 平等院HP )
平等院 阿字池 ( あじいけ )
鳳凰堂の前に広がるのは, 池と建物が一体となった「 浄土式庭園 」。
阿字池は, 極楽にある「 宝池 ( ほうち ) 」を表し, 鳳凰堂と池を含む庭園全体が一体となって「 極楽浄土 」の風景を表現しています。
確かに, いろんな神社仏閣へ行っても, 本殿や本堂自体が素晴らしい建築様式はいっぱいあるけど, 建築物と池を含む庭園全体が一体となって見るものに訴えかけてくる眺めは他にそうはありません。
この眺めを昔の人が見たなら, 本当に「 極楽浄土 」はこんなところなんだろうと, おぼろげに想像できたのかもしれませんね。
そして, 建築された向きにも意味があります。 東向に建てられた鳳凰堂。 人々が拝む方向に「 西方浄土 」があるんです。
浄土院 ( じょうどいん )
外観のみ拝観可能
羅漢堂 ( らかんどう )
浄土院の境内にある羅漢堂。 平等院の中では, 唯一禅宗様式で, 高さ5.5.M, 幅4Mのお堂。 祀られているのは, 宝冠釈迦如来像。 周りには, 釈迦の弟子である16体の羅漢像。
養林庵書院 ( ようりんあんしょいん 非公開 )
伏見桃山城から移築されたと伝わります。
最勝院 ( さいしょういん )
外観のみ拝観可能
観音堂 ( かんのんんどう )
鳳凰堂の次に古い建物なのが, 「 観音堂 」。 平等院が創建された当時は, この場所に本堂があったと伝えられています。
本尊は, 十一面観音立像。 鳳凰堂の阿弥陀如来より古いものといわれています。 現在は, ミュージアム鳳翔館に安置されています。
扇の芝
観音堂の横にある扇の形をした芝にはある逸話が。
平安末期の源平の戦いのきっかけとなった「 宇治橋合戦 」。 平家打倒に立ち上がった源頼政は, 平氏軍に追撃されて, 平等院の扇の芝のあるところで自刃 ( じじん ) 。 扇を広げて時世の句を詠んだそう。
埋もれ木の 花咲こともなかりしに 身のなる果てぞ 悲しかりける
毎年5月26日には, 扇の芝と最勝院にある源頼政のお墓で法要が営まれます。
源頼政のお墓
鳳翔館ミュージアム
鳳翔館ミュージアムの入り口
梵鐘 ( ぼんしょう 国宝 )
日本三名鐘の一つで, 平安時代から伝わるその姿は, 60円切手にも描かれました。
鳳凰 ( 国宝 )
1万円にも描かれている平等院の鳳凰。 実際に創建当時から昭和43年まで鳳凰堂の屋根に飾られていた鳳凰像が間近で見ることができます。
鳳凰堂内部再現の間
鳳凰堂の内部は色褪せているけど, ミュージアムの中に再現。
創建当時に描かれていた朱色をメインとした極彩色の「 来迎図 らいごうず 」。 今まさに亡くなろうとしている人を迎えに来ている様を表しています。
平等院 アクセス
京阪「宇治駅」から徒歩約10分, JR「宇治駅」から徒歩約10分。
近くの観光スポット
宇治公園
平等院から徒歩約1分のところにあるのが, 「 宇治公園 」。
宇治川に浮かぶ中洲が公園になっています。 ベンチもあり平等院を観光した後でゆっくり休むことができます。
紫式部が「 源氏物語 」の十帖の舞台にこの辺りを選んだことはあまりにも有名。 また, 源義経と木曽義仲による戦いもありました。
宇治公園と左岸に挟まれた川は宇治川本流とはうって変わって穏やかな流れ。夏は鵜飼が行われます。
宇治神社
平等院から徒歩約5分にあるのが, 「 宇治神社 」。
平安時代に平等院ができる遥か前からある宇治の産土神 ( うぶすながみ ) の神社。 祭神の菟道稚郎子命 ( うじのわき いらつこの みこと ) が “宇治” の由来となりました。
兄弟でお互いに天皇の座を譲り合い, ある悲劇によって天皇になったのが仁徳天皇。 大阪 堺にある世界遺産の「 百舌鳥 ( もず ) ・ 古市 ( ふるいち ) 古墳群 」の仁徳天皇陵で有名です。
宇治上神社
平等院から徒歩約7分にあるのが, 「 宇治上神社 」。
明治維新までは, 宇治上神社から徒歩約2分にある『 宇治神社 』と二社でひとつの神社として扱われていました。 宇治上神社が, 「 離宮上社 ( かみしゃ ) 」, 宇治神社が, 「 離宮下社 ( しもしゃ ) 」 と呼ばれていました。
本殿 ( 国宝 ) は, 現存する日本最古の神社建築で, 平安時代後期に伐採された木材を使用していることが確認されています。 そして,「 年輪年代測定法 」によって康平三年 ( 1060 ) に建立されたと推測されます。
京都にある神社は応仁の乱などで被災してしまい, ほとんど江戸時代以降のものが多いから, 平安時代に建築された宇治上神社の本殿や拝殿 ( 国宝 鎌倉時代 ) は, 本当に貴重。 一見の価値ありです。
平等院 まとめ
池を含む庭園全体と一体となって「 極楽浄土 」の風景を表している鳳凰堂は, 本当に美しい。 10円玉に刻まれているのも納得出来ます。
東大寺の大佛様も巨大で圧倒的だけど, 鳳凰堂内の阿弥陀如来坐像は, 黄金色や装飾など, また違った意味で, 大いなる力を発しているような迫力を感じます。
追加料金が必要だけど, 是非鳳凰堂内部の拝観をオススメします。
京都 神社仏閣 関連リンク
※ 拝観時間・拝観料等は変更されることがありますので、寺院にご確認ください。万が一、間違っていたとしても責任は負いかねます。予めご了承ください。
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